論文を国際誌に投稿する際、英語の要旨(アブストラクト)の提出を求められることがほとんどです。
「英語で要旨を書かなければ」と構えてしまう方も多いのですが、実は発想を変えると楽になります。英語の要旨は「英語で書く」のではなく、「完成した日本語の要旨を翻訳する」ことで出来上がるものです。
この記事では、要旨作成から英訳までの流れと、見落としがちな注意点を解説します。
1. まず日本語の論文要旨を作成する
英語の要旨を準備する前に、まずは日本語の要旨を完成させましょう。
要旨とは、文字通り「論文の要約」です。したがって、要旨を書くためには、論文の内容がある程度固まっている必要があります。
ここで「ある程度」と書いたのには理由があります。研究者によって、要旨を作るタイミングは異なるからです。
- 論文をほぼ書き上げてから、最後に要旨をまとめる方
- 先に構成と主張を固め、要旨を作成してから論文本体を書き進める方
どちらのアプローチでも構いません。大切なのは、「要旨は論文の要約である」という原則を念頭に置いておくことです。要旨だけが独り歩きしてしまうと、論文本体との整合性が取れなくなります。
なお、日本語の要旨に盛り込む要素は、一般的に以下のとおりです(分野によって多少異なります)。
- 研究の背景・目的
- 方法
- 結果
- 考察・結論
医学系や理工系ではIMRAD形式(Introduction, Methods, Results, and Discussion)に沿った構成が求められることも多いので、投稿先のガイドラインを事前に確認しておきましょう。
2. 日本語の要旨を英訳する
日本語の要旨が完成したら、それを英訳します。
ここで強調しておきたいのは、「英語の要旨を一から作る」のではなく、「完成した日本語の要旨を翻訳する」という考え方です。
英語で一から書こうとすると、構成がぶれやすく、結果的に論文本体との整合性も取りにくくなります。また、日本語で論理を整理してから英訳するほうが、表現も明確になりやすいです。
英訳の際には、以下の点を意識するとよいでしょう。
- 簡潔で明確な表現を心がける
- 時制の使い方(方法・結果は過去形、一般的な事実や結論は現在形など)
- 受動態と能動態の使い分け
- 分野特有の用語や表現への配慮
ご自身で英訳される場合は、同じ分野の英語論文をいくつか読み、よく使われる表現やフレーズを参考にするのも有効です。
3. 単語数の調整が重要
英語の要旨を準備するうえで、意外と見落とされがちなのが「単語数」です。
投稿先の雑誌によっては、要旨の単語数が厳密に決められています。250ワード以内、300ワード以内など、上限が設定されていることが多いです。
では、日本語の要旨を英訳すると、どのくらいの単語数になるのでしょうか。
目安として、日本語600文字で英語280単語ほどになります。もちろん、これは概算であり、表現の仕方によって日本語も英語も分量は変わります。ただ、ひとつの参考値として覚えておくと便利です。
もし指定の単語数をオーバーしてしまった場合は、以下の順序で対処するのがおすすめです。
(1)まず英語表現の調整で対応できないか探る
冗長な表現を削る、より簡潔な語彙に置き換えるなど、英語側の工夫で単語数を減らせないか検討します。たとえば、”in order to” を “to” に置き換える、”a number of” を “several” や “many” にするなど、細かい調整で数ワード削れることがあります。
(2)それでも収まらない場合は、日本語の要旨を短縮する
英語表現の調整だけでは限界がある場合、内容そのものを縮小する必要があります。この場合は、日本語の要旨に立ち戻り、優先順位の低い情報を削ります。英訳後に内容を削ると、論理の流れが崩れやすいので、日本語の段階で調整するのがポイントです。
4. 翻訳を外注する場合のポイント
要旨の英訳は、ご自身で行うことも可能ですが、専門の翻訳サービスを利用するのも一案です。特に、投稿先の査読を通過するためには、正確で自然な英語表現が求められます。
翻訳を外注する際には、以下の点を確認しておくとスムーズです。
- 専門分野に精通した翻訳者が担当するか
- ネイティブチェックが含まれているか
- 単語数制限への対応が可能か
- キーワードの指定ができるか
- 論文本体を参考資料として共有できるか
当社でも、研究者や大学院生の方から要旨(アブストラクト)の英訳をお受けしています。内容を深く理解したうえで翻訳に取り組み、単語数の調整にも対応しておりますので、お気軽にご相談ください。
まとめ
論文要旨の英訳は、「日本語の要旨を完成させてから翻訳する」のが基本です。
- まず日本語で論理を整理し、要旨を仕上げる
- 完成した日本語の要旨を英訳する
- 単語数制限を意識し、オーバーしたらまず英語表現で調整、それでも無理なら日本語を短縮
このステップを押さえておけば、英語の要旨作成も効率よく進められるはずです。
困ったときは、専門の翻訳サービスを活用することも検討してみてください。
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