戸籍謄本の英訳が必要になったとき、「英語がそこそこできるなら、自分で訳せるんじゃないか?」と考える方は少なくありません。
翻訳会社に頼めばお金がかかるし、できることなら自分でやりたい。その気持ちはよく分かります。
ただ、実際にやってみると、英語力とは関係ないところで思わぬ壁にぶつかります。ここでは、戸籍謄本を自分で英訳しようとすると何が起きるのか、順を追ってお話しします。
まず戸籍謄本を広げてみると
英訳しようと思い立ち、まず原本を広げてみます。
すると、日本語で読んでも独特な書式だということに気づきます。複数の枠線で区切られた横書きのレイアウト、「戸籍事項」「身分事項」「従前戸籍」といった見慣れない項目名。普段の生活では目にすることのない書式です。
そもそも日本語としての理解にも少し時間がかかります。ここから英語にするとなると、「どこから手をつければいいんだろう」と手が止まってしまう方が多いようです。
専門用語という壁
戸籍謄本には、日常の英語ではまず出てこない概念や用語がたくさん登場します。
たとえば、「戸籍事項」「身分事項」「改製事由」「従前戸籍」「続柄」──こうした項目名を英語でどう表すか、すぐに答えられる方はあまりいないのではないでしょうか。
さらに厄介なのが、法令の引用文です。戸籍謄本には「平成6年法務省令第51号附則第2条第1項による改製」のような記載が出てくることがあります。これをどう英訳するかは、英語が得意なだけでは判断がつきません。
多くの方がまず試すのは、ChatGPTやDeepLなどのAI翻訳に文面を入力してみることだと思います。ところが、戸籍謄本のような書類の場合、ツールによって出てくる訳語がバラバラです。ChatGPTではこう出る、DeepLでは別の訳になる、Google翻訳ではまた違う。ネット上のブログや掲示板を調べても、書いている人によって訳語が異なります。
ここで困るのは、どれが「正しい」のか、自分では判断がつかないということです。戸籍翻訳に慣れていないと、「たぶんこれでいいだろう」という不安を抱えたまま作業を進めることになります。
フォーマットをどうするか
訳語の問題をなんとか乗り越えたとしても、次に出てくるのがフォーマットの問題です。
原本の戸籍謄本は、枠線や記載欄で構成された独自のレイアウトになっています。英訳するとき、このレイアウトはどこまで再現すべきなのか。Wordで作ればいいのか、Excelで表にしたほうがいいのか。それとも、レイアウトは気にせずテキストだけ訳せばいいのか。
このあたり、提出先によって求められる形式が違いますし、明確な指示がないことも珍しくありません。苦労してレイアウトを再現しても、「形式が合っていません」と言われる可能性があるのは、なかなかつらいところです。
翻訳証明書という壁
専門用語をなんとか訳し、フォーマットもそれなりに整えて、いざ提出。
ところがここで、「翻訳証明書を添付してください」と言われることがあります。
翻訳証明書というのは、「この翻訳は正確で、原文に忠実です」ということを翻訳者または翻訳会社が証明する書類です。ビザ申請や海外の公的機関への提出では、この翻訳証明書の添付を求められるケースが多くあります。
そして、自分で訳した場合、翻訳証明書は発行できません。加えて、多くの提出先では「第三者による翻訳」が要件になっているため、本人が訳したものはそもそも受け付けてもらえないことがあります。
この段階で初めて「第三者翻訳」の要件を知る方は、実は少なくありません。時間をかけて仕上げた翻訳が、制度上の理由で使えないと分かったときのショックは大きいものです。
結局やり直しになるパターン
当社にも、こうしたご相談が寄せられることがあります。
- 自分で訳して提出したが、「本人訳は不可」と差し戻された
- 翻訳証明書がないため受理されず、やり直しになった
- 期限が迫っていて急ぎの依頼になり、割増料金がかかった
こうなると、自分で訳すために使った時間が無駄になるだけでなく、翻訳会社への依頼費用も改めて発生します。ビザ申請のように提出期限が決まっている手続きでは、スケジュールへの影響も深刻です。
「最初からプロに頼んでおけばよかった」という声は、正直なところよくいただきます。
自分で訳してもいいケース
とはいえ、すべてのケースで「自分で訳してはいけない」というわけではありません。
たとえば、公的な提出が目的ではなく、書かれている内容を自分で把握しておきたいだけという場合。あるいは、提出先が翻訳証明書を求めていない場合(稀ですが、ないわけではありません)。こうしたケースであれば、自分で訳すことに問題はありません。
ただ、ビザ申請や海外の公的機関への提出となると、翻訳証明書や第三者翻訳の要件が絡んでくるため、自分で訳すという選択肢は現実的ではなくなります。
まとめ
戸籍謄本の英訳を自分でやろうとすると、ぶつかるのは英語力の問題ではありません。専門用語、フォーマット、そして翻訳証明書という3つの壁です。
とくに翻訳証明書と第三者翻訳の要件は、英語がどれだけ得意であっても自力では超えられない、制度上のハードルです。
ビザ申請や海外への提出が目的であれば、最初から翻訳会社に依頼するほうが、時間的にも費用的にも結局は近道です。
依頼先をどう選べばよいか(翻訳会社・知人・行政書士の比較)については、下記の記事で詳しくまとめています。
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翻訳会社 タイナーズのブログ


