「全面保護メガネ」、英語でどう訳す?—SDS翻訳でよくある落とし穴

SDSを翻訳していると、保護具の欄で「全面保護メガネ」という表現に出くわすことがあります。

これ、日本語としては何となく通じるんですが、いざ英語にしようとすると困るんですよね。「全面」って、いったい何が「全面」なのか。

ゴーグルみたいに目の周りを密閉するタイプなのか、サイドシールド付きの保護メガネなのか、それとも顔全体を覆うフェイスシールドのことなのか——原文だけでは判断がつかないケースがほとんどです。

ここを曖昧なまま訳してしまうと、英語側のPPE要求が実態より厳しくなったり、逆に緩くなったりして、現場の運用に影響が出かねません。

英語は「形状」で言い分ける

日本語の「全面保護メガネ」は便利な表現ですが、英語圏では保護具を形状や防護範囲で細かく区別します。ざっくり整理するとこんな感じです。

ゴーグル系(目の周囲まで覆うタイプ)

  • safety goggles
  • fully enclosed safety goggles / full-coverage safety goggles
  • 液体飛沫を想定するなら:chemical splash goggles
  • 換気構造まで言及するなら:indirect-vented goggles(間接換気型)

「全面=目の周りをしっかり覆う」という意図なら、chemical splash gogglesfully enclosed safety goggles あたりが無難です。

保護メガネ系(側面をカバーするタイプ)

  • safety glasses with side shields
  • safety spectacles with side protection

密閉ではないけど横からの飛来物も防ぐ、という意味ならこちら。

顔全体を覆うタイプ(フェイスシールド)

  • face shield
  • 併用を明記する場合:face shield worn over safety goggles/glasses

ここで注意したいのは、「全面」という日本語に引きずられて安易に face shield と訳してしまうパターン。原文が「目の保護」を指しているだけなのに、顔面保護まで求めてしまうと、要求が過剰になります。

英訳の早見表

日本語の意図 英語表現 備考
目の周囲を密閉 safety goggles / fully enclosed safety goggles 最も一般的なゴーグル
液体飛沫対策 chemical splash goggles 飛沫リスク明記時に
側面もカバー(密閉ではない) safety glasses with side shields サイドシールド付き
顔全体を覆う face shield ※安易に使わない
判断つかない場合 full-coverage eye protection (goggles or glasses with side shields) 包括表現で逃がす

現物が分からないとき、どう書くか

実務では、お客様から預かったSDSの原文だけ見ていて、実際にどんな保護具を想定しているのか特定できないことが普通にあります。

こういうとき、英語側で勝手に決め打ちするのはリスクがあるので、両方あり得ることを示して逃がす書き方がおすすめです。

無難な包括表現

full-coverage eye protection (safety goggles or safety glasses with side shields)

「全面保護」を full-coverage で受けつつ、括弧内でゴーグルとサイドシールド付き眼鏡の両方を許容する形です。SDSのPPE指示として読んでも違和感がありません。

指示文として使うなら

Wear full-coverage eye protection (safety goggles or safety glasses with side shields).

飛沫リスクが明記されている場合は、もう少し踏み込んで:

Wear chemical splash goggles where splashing is possible.

避けたい英語表現

  • full-face safety glasses
  • full-face goggles

この辺の表現は「顔面全体」を連想させやすく、face shield の領域に踏み込んでしまいがちです。「全面」を直訳して “full-face” にしてしまうのは、現場で混乱を招く典型的なミスなので気をつけてください。

SDSのどこに出てくる?

保護メガネやゴーグルなどのPPE指定は、基本的にSection 8(ばく露防止及び保護措置)にまとまっています。

Section 8: Exposure controls/personal protection

もちろん、Section 7(取扱い・保管)や Section 4(応急措置)に補足的に出てくることもありますが、PPEの本丸は Section 8 と覚えておけば間違いありません。

実務での判断フロー

「全面保護メガネ」を見たら、私はだいたいこんな順番で考えています。

  1. 場所を確認 — PPE欄(Section 8)の記載か?
  2. 飛沫リスクの有無 — 「飛沫」「スプラッシュ」「ミスト」などの記載があるか?
    • あれば → chemical splash goggles 寄せ
  3. 規格や形状の手がかり — 「密閉型」「間接換気」「サイドシールド」などの記載がないか探す
  4. 手がかりなしfull-coverage eye protection (goggles or glasses with side shields) で断定を避ける

もし実際に見ているSDSで「全面保護メガネ」が出ている箇所があれば、その一文だけ貼っていただければ、文脈に合わせた訳案を考えます。

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