登記簿謄本、履歴事項全部証明書、現在事項全部証明書。結局どう違うのか

海外進出の手続きで「登記簿謄本の英訳が必要」と言われた。法務局のサイトを見ると、「履歴事項全部証明書」「現在事項全部証明書」という言葉が出てくる。登記簿謄本とは違うのか。どれを取ればいいのか。

この混乱は、非常によくある。登記簿に馴染みのない人にとって、これらの用語の関係を理解するのは難しい。

結論から言えば、登記簿謄本と履歴事項全部証明書は、実質的に同じものだ。そして、現在事項全部証明書は、そこから「現在有効な情報だけ」を抜き出したものだ。

この関係を理解しておくと、海外提出書類の準備がぐっと楽になる。

登記簿とは何か

まず、「登記簿」という言葉の意味を確認しよう。

登記簿とは、法務局が管理している会社情報のデータベースだ。会社の商号、本店所在地、役員、資本金など、法律で登記が義務づけられている事項が記録されている。

かつては紙の帳簿だったが、現在はコンピュータで管理されている。この登記簿そのものは法務局にあり、一般の人が直接見ることはできない。

では、私たちが「登記簿謄本」と呼んでいるものは何か。

登記簿謄本とは「登記簿の写し」

「謄本」とは、原本の内容を全部写したもの、という意味だ。

つまり、登記簿謄本とは、法務局にある登記簿の内容を写した書類のことだ。

ただし、「登記簿謄本」という名称は、紙の帳簿だった時代の呼び方だ。コンピュータ化された現在、正式名称は「登記事項証明書」に変わっている。

しかし、実務では今でも「登記簿謄本」という言葉が広く使われている。「登記簿謄本を取ってきて」と言われたら、法務局で「登記事項証明書」を請求すればよい。

登記事項証明書の種類

登記事項証明書には、いくつかの種類がある。主なものは以下の通りだ。

履歴事項全部証明書

現在有効な登記事項に加えて、一定期間(おおむね3年分)の変更履歴が記載されている。過去に誰が役員だったか、本店がどこにあったか、といった情報が分かる。

現在事項全部証明書

現在有効な登記事項のみが記載されている。過去の履歴は含まれない。

閉鎖事項証明書

履歴事項全部証明書にも載らないほど古い情報、または会社が移転・合併などで閉鎖された登記簿の情報が記載されている。

代表者事項証明書

代表者(代表取締役など)に関する事項のみが記載されている。

登記簿謄本=履歴事項全部証明書

ここで重要なポイントがある。

一般に「登記簿謄本」と言ったとき、多くの場合は履歴事項全部証明書を指す。

なぜなら、履歴事項全部証明書が最も情報量が多く、「登記簿の写し」として最も網羅的だからだ。現在の情報も、過去の履歴も、両方含まれている。

つまり、こう考えてよい。

  • 登記簿謄本 ≒ 履歴事項全部証明書(現在+履歴)
  • 現在事項全部証明書 = 登記簿から現在有効な情報だけを抽出したもの

履歴事項全部証明書は、現在事項全部証明書の内容を「含んでいる」。だから、どちらを取るか迷ったら、履歴事項全部証明書を取っておけば間違いない。

海外提出で「どちらを求められているか」

海外の銀行口座開設、現地法人設立、ビザ申請などで「登記簿謄本の英訳」を求められることがある。

このとき、提出先が求めているのは「履歴事項」なのか「現在事項」なのかを確認することが重要だ。

「履歴事項」を求められている場合

「Certificate of All Historical Matters」「with history」「full extract」などの表現があれば、履歴事項全部証明書を用意する。会社の変遷を確認したい、という意図がある。

「現在事項のみ」を求められている場合

「current matters only」「現在事項のみ」などの指定があれば、現在事項全部証明書でよい。今の状態だけ分かればいい、という場合だ。

指定がない場合

指定がなければ、履歴事項全部証明書を用意するのが無難だ。現在事項も含まれているので、情報が足りないということはない。

よくある混乱と対処法

海外提出の実務で、以下のような混乱がよく起きる。

混乱1:「登記簿謄本」と言われたが、法務局の窓口に「登記簿謄本」という書類がない

→ 「履歴事項全部証明書」を請求すればよい。これが実質的な「登記簿謄本」だ。

混乱2:履歴事項と現在事項、どちらを取ればいいか分からない

→ 迷ったら履歴事項全部証明書。現在事項も含まれているので、情報不足にはならない。

混乱3:提出先から「履歴事項」を指定されているのに、現在事項を出してしまった

→ 差し戻しになる可能性が高い。提出前に必ず確認する。

混乱4:英訳を依頼するとき、どの証明書を渡せばいいか分からない

→ 翻訳会社に「海外の〇〇に提出する」と伝え、どちらが適切か相談するのも手だ。

図で整理する

登記簿と各種証明書の関係を図で整理すると、以下のようになる。

登記簿関係図

履歴事項全部証明書は現在事項全部証明書を「含んでいる」。だから、履歴事項を取れば、現在事項も自動的に手に入る。

まとめると

登記簿謄本、履歴事項全部証明書、現在事項全部証明書。名前が違うので別物に見えるが、関係は単純だ。

  • 登記簿 = 法務局にある会社情報のデータベース
  • 登記簿謄本(登記事項証明書) = 登記簿の写し
  • 履歴事項全部証明書 = 現在の情報+過去の履歴を含む証明書(=一般的な「登記簿謄本」)
  • 現在事項全部証明書 = 現在の情報のみを抽出した証明書

海外提出で「登記簿謄本」を求められたら、まず履歴事項全部証明書を取得する。提出先から「現在事項のみ」と指定されていれば、現在事項全部証明書に切り替える。

この関係を理解しておけば、海外進出の書類準備で迷うことが減るはずだ。

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