ChatGPTやClaudeなどの生成AI、DeepLなどのAI翻訳ツールの普及により、契約書を自社でAI翻訳するという選択肢が出てきました。
AI翻訳の出力をそのまま使えば、確かにコストはかかりません。しかし、契約書でそれは現実的でしょうか。この記事では、契約書をAIで翻訳することのリスクと、なぜプロに依頼すべきかを解説します。
契約書のAI翻訳という選択肢
生成AIやAI翻訳ツールは急速に進化しており、一般的な文書であれば実用的な翻訳ができるようになってきました。無料または低コストで使えるため、翻訳コストを削減したいという考えは自然なことです。
しかし、AI翻訳の出力をそのまま契約書として使う企業はほとんどありません。なぜなら、誤訳があったときのリスクが大きすぎるからです。
結局、AI翻訳を使う場合でも、社内の担当者が内容を確認し、必要に応じて修正する工程が発生します。担当者の人件費と時間コストを考えると、本当に安いのでしょうか。
AI翻訳が契約書に不十分な理由
AI翻訳が契約書に向かない理由は、大きく3つあります。
法律用語の誤訳リスク
法律用語には、一般的な意味と法的な意味が異なるものが多くあります。
たとえば、英語の「shall」は一般的には「〜するつもりだ」という意味ですが、契約書では「〜しなければならない」という義務を表します。この違いを正しく訳し分けられなければ、契約内容が根本的に変わってしまいます。
また、「indemnify(補償する)」「warrant(保証する)」「represent(表明する)」など、日本語では似たような意味に見えても、法的には明確に区別される用語があります。AI翻訳はこうした法律用語の微妙なニュアンスを正確に訳し分けることが難しいのです。
契約書における法律用語の重要性については、「英文契約書と準拠法条項」でも触れています。
文脈・背景を理解できない
契約書の翻訳で最も重要なのは、文脈と背景を正しく理解することです。ここがAI翻訳の最大の弱点です。
契約書は、当事者間の権利と義務を定めた文書です。どちらが義務を負うのか、どちらが権利を持つのか、それを正確に読み取らなければ、正しい翻訳はできません。
たとえば、ある条項に「甲は〜するものとする」と書かれていても、その「甲」が売主なのか買主なのか、ライセンサーなのかライセンシーなのかによって、英訳の表現は変わります。契約書の冒頭で定義された当事者の関係を理解し、全体の構成を把握した上で、各条項を訳す必要があります。
また、契約書には「前条に定める場合を除き」「第○条に基づき」といった、他の条項を参照する表現が頻繁に出てきます。AI翻訳は一文ずつ処理するため、こうした契約全体の構成を踏まえた翻訳が苦手です。
私たちが翻訳する際は、まず契約書全体を読み、当事者の関係性、契約の目的、各条項の役割を把握してから、翻訳に取りかかります。一文だけを見て正しく訳すことは、人間の翻訳者でも難しいのです。
日本語の契約書自体の正確性についても、「日本語の契約書はそもそも正しいですか?」で解説しています。
一貫性が保たれない
契約書では、同じ用語は同じ訳語で統一することが鉄則です。たとえば、「本契約」を「this Agreement」と訳したなら、契約書全体を通じて「this Agreement」で統一しなければなりません。
しかし、AI翻訳は文脈によって異なる訳語を選ぶことがあります。「this Agreement」「this Contract」「the Agreement」などが混在すると、法的には別のものを指している可能性が生じ、契約の解釈に混乱をきたします。
「1組」という言葉を「pair」と訳すか「set」と訳すかなど、細かい用語の選択も重要です。詳しくは「1組は「Pair」か「Set」か」をご覧ください。
AI翻訳が引き起こしうるトラブル
AI翻訳による誤訳は、以下のようなトラブルにつながる可能性があります。
契約解釈の相違:日本語版と英語版で内容が異なると、契約当事者間で解釈の相違が生じます。「そんなつもりではなかった」という事態になりかねません。
取引先との信頼関係の悪化:不正確な翻訳や不自然な表現は、相手方に「この会社は大丈夫か」という不信感を与えます。特に海外企業との取引では、契約書の品質がそのまま会社の信頼性として見られることがあります。
最悪の場合、契約上のトラブルが紛争に発展する可能性もゼロではありません。
プロの翻訳会社に依頼するメリット
契約書の翻訳をプロの翻訳会社に依頼するメリットは、以下のとおりです。
- コストが安定して低い:社内で確認・修正する人件費と時間を考えると、最初から外注したほうがトータルコストは抑えられます。料金も事前に見積もりで確定するため、予算管理がしやすくなります。
- 契約内容を読み解いてから翻訳:プロの翻訳者は、契約書全体を読み、当事者の関係や契約の構造を把握した上で翻訳します。
- ネイティブチェック:英訳の場合、ネイティブスピーカーが最終チェックを行うことで、自然で正確な英語になります。
- 納品後の修正対応:納品後に修正が必要になった場合も、対応してもらえます。
ただし、翻訳会社は法律の専門家ではありません。翻訳会社が行うのは、あくまで言語の変換です。契約内容の法的な妥当性については、日本語の契約書であれ英語の契約書であれ、必要に応じて法律事務所に確認することをおすすめします。
契約書翻訳の料金相場については、「契約書の翻訳料金はいくら?相場と見積もりのポイントを解説」で詳しく解説しています。
当社の契約書翻訳サービス
当社では、契約書の翻訳を以下の料金で承っています。
- 英訳(日本語→英語):1文字14円
- 和訳(英語→日本語):1単語15円
ネイティブチェックと納品後の修正対応が含まれており、追加料金はありません。
秘密保持契約書(NDA)、業務委託契約書、フランチャイズ契約書、M&A関連契約書など、さまざまな契約書の翻訳実績があります。
詳しくは契約書翻訳サービスのページをご覧ください。無料でお見積もりいたします。
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