戸籍謄本の英訳を外国の機関に提出しようとすると、「公証が必要です」「アポスティーユを付けてください」と言われることがあります。
いざそう言われると、何をどこに持っていけばいいのか、戸惑う方も多いと思います。
この記事では、どういった場合に公証やアポスティーユが求められるのかを整理してみます。
そもそも、なぜ「認証」が必要になるのか
戸籍謄本は市区町村が発行する公的な文書ですが、その英訳は翻訳会社や個人が作成した「私文書」です。
私文書は誰でも作れるため、提出先の機関から見ると「本当にこの内容で作られたものなのか」「改ざんされていないか」が確認できません。
そこで、一定の手続きを経て文書の真正性を担保する必要が生じます。それが公証やアポスティーユです。
つまり、「誰が作ったか、改ざんされていないか、ということを提出先が確認したい場合」に、英訳への公証やアポスティーユが求められます。
公証とアポスティーユ—何がどう違うのか
公証(notarization)は、公証役場の公証人が行う認証手続きです。
翻訳者が署名した翻訳文書や、翻訳に関する証明書について、公証人がその署名の真正性を認証します。
これにより、私文書が「公証人の認証を受けた文書」として扱われるようになります。
公証手続きの具体的な流れについては、戸籍謄本 英語に翻訳から公証まで カナダ編で実例を交えて解説しています。
アポスティーユ(apostille)は、1961年のハーグ条約に基づく認証制度です。
外務省がその文書にアポスティーユを付与することで、条約の締約国間で広く通用する形式の証明が得られます。
アポスティーユの仕組みや必要な国・不要な国については、アポスティーユとは?必要な国・不要な国をわかりやすく解説で詳しくまとめています。
アポスティーユは「公文書」を対象とする枠組みですので、市区町村が発行した戸籍謄本(原本)であれば、公証役場を経由せず直接外務省にアポスティーユの付与を申請できます。
一方、翻訳文はそのままでは私文書ですから、翻訳文そのものに対してアポスティーユ相当の担保が求められる場合には、まず公証役場で認証を受けて「公証人が認証した文書」の状態にした上で、外務省への申請に進むという流れになります。
提出先の国がハーグ条約の締約国であれば、基本的にはアポスティーユのルートが使えます。
締約国でない場合は、外務省による公印確認を経て、相手国の在日大使館・領事館による領事認証が必要になります。
ただし、締約国であっても提出先の機関(特に民間の金融機関や大学など)によっては独自の要件を設けていることがあるため、事前に提出先へ確認することが大切です。
必要になりやすい場面
どういったケースで公証やアポスティーユが求められるのか、代表的な場面をご紹介します。
ただし、必ず必要かどうかは提出先の当局や機関が決めることです。以下はあくまでも「求められやすい場面」の整理であり、必要性の最終確認は提出先に直接行ってください。
海外での婚姻手続き・婚姻登録
外国で婚姻の届出をする際に、相手国の役所が婚姻要件の確認や身分事項の登録のために戸籍の内容を求めることがあります。
この場合、英訳に加えて公証やアポスティーユがセットで求められるケースがよくあります。
なお、日本には「婚姻証明書」という書類がないため、戸籍謄本や婚姻受理証明書で代用することになります。詳しくは婚姻受理証明書(翻訳)の代わりになる戸籍謄本をご覧ください。
移民・在留資格・永住・国籍取得
海外に移住する、配偶者や家族を帯同して在留資格を得るといった手続きでは、親子関係・婚姻・離婚・死亡などの身分関係を厳格に証明するよう求められます。
このような場面では翻訳文にも「認証済み」の担保が要求されることがあります。
出生登録・認知・養子縁組
子の国籍・親権・扶養関係に直結する手続きでは、役所側が書類の形式要件を厳しく求めることがあり、翻訳文への公証やリーガリゼーション(認証の連鎖)が条件となりやすい場面です。
海外の相続・金融機関での名義手続き
海外に資産があり、相続や名義変更が発生する場合、外国の裁判所・金融機関・公証役場などが相続人の続柄を確認するために戸籍を求めることがあります。
書類一式の真正性を確認する運用を取っている機関では、翻訳文への認証も求められます。
海外の裁判所・行政機関への証拠提出
国際的な訴訟や行政手続きで戸籍の内容が必要になる場合、裁判所・官庁が「認証済み翻訳」を要求することがあります。
形式要件が明文化されているケースもあります。
日本の翻訳者制度について
日本には、国が認定する翻訳者の資格制度(いわゆる「認定翻訳者」制度)がありません。
そのため、外国の手続きで「資格ある翻訳者による翻訳」が要件とされていても、日本国内でその要件を満たす翻訳者を探すのは現実的に難しいのが実情です。
なお、英国のCIOLや米国のATAといった海外の翻訳資格を持つ翻訳者が日本在住で活動しているケースはありますが、戸籍謄本の英訳を依頼したい方がそうした翻訳者を自力で探し当てるのは容易ではありません。
実務上は、翻訳会社が翻訳証明を付けることで手続きが進むケースが多くあります。
ただし、国や機関によって要件は異なりますので、翻訳証明の形式や内容についても、提出先に確認しておくのが確実です。
まとめ
公証やアポスティーユが必要かどうか、またどのような形式が求められるかは、すべて提出先の当局や機関の要件によって決まります。
「アポスティーユが必要と聞いた」「公証だけでいいと聞いた」という情報も、状況によって異なることがあります。
手続きを始める前に、提出先に「戸籍謄本の英訳について、どのような認証が必要か」を具体的に確認することが、遠回りのようで最も確実な方法です。
戸籍謄本の英訳についてのご相談は、タイナーズの戸籍謄本英訳サービスまでお気軽にどうぞ。
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